事例回答
事務局で受けた相談事例や質問をご紹介します。
定年後の再雇用と年次有給休暇の付与日数について
定年後の再雇用嘱託についてなのですが、継続雇用にならないよう、再雇用の方には再雇用までの間に1ヵ月以上は休んでもらっています。
この場合、年次有給休暇は持ち越さないと考えてよいでしょうか。
年次有給休暇は、定年前の勤続年数を通算して算出した日数を付与すべきものとなります。従いまして、法令通りでいけば20日付与となります。もちろん、残余日数も繰り越します。

年次有給休暇は、定年前の勤続年数を通算して算出した日数を付与すべきものとなります。従いまして、法令通りでいけば20日付与となります。もちろん、残余日数も繰り越します。

そのため、貴社の再雇用嘱託就業規程第15条に基づく別表は問題があります。ただし、定年再雇用以後、有給休暇付与基準日において就業日数が少ない場合は、比例付与の対象とはなります。

高年齢者雇用安定法は、事業主に定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置を講じることを義務付けています。ご承知のように、継続雇用制度は定年後も引き続き雇用する制度ですが、その場合、定年退職日の翌日から雇用する制度となっていないことをもって、直ちに法違反となるものではありません。ただし、定年後相当期間をおいて再雇用する場合には、「継続雇用制度」といえない場合もあります。 

ところで、労働基準法の解釈では、再雇用の場合には,定年前と再雇用後とが継続勤務といえるかどうかが問題となります。

それは通達(昭和63年3月14日基発150号)によって次のとおり述べています。

「継続勤務とは、労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと。この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する。

イ.定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合 (退職手当規程に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む 。) ただし、退職と再採用との間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りでない。」としています。

さて、以上のように、高年齢者雇用安定法に基づく解釈では、

「定年後相当期間をおいて再雇用する場合には、継続雇用制度といえない場合もある」としています。

一方、労働基準法に基づく通達では、

「退職と再採用との間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りでない」とし、有給休暇はリセットして良いとしています。

では、労働基準法通達を根拠として再雇用後の有給休暇付与はリセットして良いかというと、ここで登場してくるのが高年齢者雇用安定法の継続雇用義務です。

有給休暇をリセットして良いくらいに空白期間を設けることは、継続雇用義務の観点から高年齢者雇用安定法違反の恐れが生ずるということです。

従いまして、有給休暇は持ち越しさせること、また、再雇用入社後は継続勤務とみなして有給休暇を付与することが必要となります。